日頃の練習として、
スケッチは最適な手段の一つとして
挙げられます。
A5のスケッチブックと鉛筆、
あるいはペンがあれば
いつでもどこでも気軽に絵を描く事が
出来るからでもあります。
僕自身、時々外出先でスケッチをしに
スケッチブックとペンを持参し、
出向く事があります。
その場でスケッチをする事もあれば、
スマホで写真を撮った帰りに
カフェに立ち寄ったり、
スケッチの続きをする事もありますね。
スケッチは場所やスペースを
取られる必要もありませんし、
気軽に出来るものでもあるので、
初心者の方から普段の練習としても
最適です。
そんなスケッチに関してですが、
用途としては同じく絵の練習でもある
デッサンと似ているところもあります。
デッサンもモチーフの形態や陰影を描く上で
最適な練習でもありますからね。
そこで今回は、デッサンとスケッチの
違いについて解説をしていきたいと
思います。
どちらも絵の練習として
最適ではありますが、
使い分ける事でその目的に合った
絵の練習をする事が出来るようになるので、
参考にしていただけると幸いです。
目次
デッサンとスケッチの関係性
デッサンとスケッチは
全くの別物ではなくて、
それぞれ補う関係にあります。
スケッチによって感性や観察力を鍛え、
デッサンでそれを理論的に裏付ける事で、
表現の幅が大きく広がります。
例えば、スケッチで得た
構図案をデッサンで深める、
あるいはデッサンで学んだ
陰影の知識をスケッチに応用する、
というように相互に活かす事が出来ます。
絵を上達する上で
どちらも大事な要素である
という事ですね。
デッサンとスケッチどちらから練習すべき?
初心者はまず
スケッチで観察の楽しさを知り、
デッサンで理論的に強化する
という流れがおすすめです。
スケッチは絵を描く事への
ハードルが下がりますし、
デッサンは描く力を
体系的に高める役割を担う為でも
あります。
絵の上達を目指す場合、
両方をバランス良く取り入れる事で
「感性と技術」
これらの両面から
実力を伸ばすことができます。
デッサンとスケッチの違いについて

デッサンとスケッチは
どちらも絵を描く技法ですが、
その目的やプロセス、表現の仕方に
違いがあります。
以下では、デッサンとスケッチの
それぞれの違いについて詳しく
解説していきます。
1. デッサンとスケッチの目的の違い

デッサンの目的とはモチーフを正確に描写する事
デッサンとは対象物を正確に観察し、
形や陰影、質感まで細かく
描き出す練習や作品のことです。
フランス語の
「dessin(デッサン)」
に由来し、
「描画」
「下絵」
という意味を持ちます。
美術の基本的な訓練としても
デッサンは使われていますし、
美術大学の入学試験や
プロを目指すアーティストにとって
欠かせないスキルとされています。
特にデッサンでは、
対象物の正確な形や
バランスを把握する事が
最も重要視されます。
そのため、時間をかけて
じっくりと描かれることが多く、
鉛筆や木炭を使ってグラデーションや
質感を丁寧に表現します。
その為、デッサンは
「どう描くか」
というよりも
「何をどう見ているか」
が問われる作業という事ですね!
実際のモチーフを正確に捉えるため、
骨格や構造を理解しながら
描く必要があるため、
観察力が大きく鍛えられます。
デッサンは単なる模写とは違い、
モチーフの奥にある構造や重さ、
空間の関係を把握して描くことが
目的となっています。
特に、デッサンを学ぶ上で
基本的な形態があるのですが、
デッサン初心者の方はまずは
これらの形態について理解し、
デッサンに役立てていく事が
上達に繋がっていく事となります。
スケッチの目的とはイメージやアイデアを記録する事
一方のスケッチとは、
対象を素早くラフに描くことで
アイデアを記録したり、
構図を考えたりするために行う
描画となります。
語源は英語の「sketch」で、
「下描き」
「走り書き」
といった意味があります。
特徴的なのは、短時間でざっくりと
描くことに重きを置いている点ですね。
なので絵の完成度よりも、印象や動き、
アイデアのメモとしての役割を
果たすことが多く、
細かい仕上げまでは求められません。
スケッチは風景や人物、動物など、
目の前にあるものを素早く
捉えることに適しており、
街中でスケッチブックを片手に
描いている人を見かける事もあります。
デザインやアニメーションの現場では、
構図やポーズの確認、
ストーリーボード作成にも
スケッチが活用されています。
2. デッサンとスケッチのプロセスの違い

デッサンとは観察と構造理解へのプロセス
デッサンは観察対象を正確に捉え、
- 形
- 明暗
- 質感
- 構造
などを分析的に描き出す過程となります。
制作の始まりでは、
まず対象の全体構成と
比率を慎重に観察し、
アタリ線を用いて構図の
バランスを整えます。
その後、徐々に主要な形を確定し、
光源を意識しながら明暗の階調(トーン)を
構築していきます。
陰影の差や反射光を丁寧に描き分ける事で、
立体感や空間性を表現します。
最終段階では、全体のトーンバランスや
焦点を調整しながら、
作品としての完成度を高めます。
デッサンは一枚の作品として
成立することもありますが、
本質的には「観察と構造理解の訓練」
としての意味合いが強く、
思考と修正を繰り返す分析的な
プロセスと捉えてもらえればと思います。
デッサンの描き方のプロセスについては
以下の記事で詳しく解説をしているので、
こちらもあわせてご覧になってください。
スケッチとは直感的なプロセスが大事
スケッチとは、対象の印象や
構成を素早く記録・表現する行為で、
プロセスはより自由で直感的な
ものとなります。
制作では、まずモチーフを見て感じた印象や
動きをラフに捉え、
線で大まかな形を描き出していきます。
線を描く際は正確な比例や
陰影にこだわらず、
リズムや勢いを重視して
筆跡を進めるのが特徴となります。
トーンや細部の描き込みは
必要に応じて加える事がありますが、
あくまで印象の補足として扱われるので、
全体の調和や流れなどを優先します。
スケッチの目的としては、
後の作品制作のための資料や
瞬間の感情・構想を記録する事にあります。
そのため、
時間をかけずに素早く描く
直感的なプロセスが重視される
という事ですね。
3. デッサンとスケッチの表現の違い

デッサンの表現とは構造的表現
デッサンの表現は、
形の正確さと構造の理解を基盤とした
理性的で秩序立った表現が特徴です。
そのため対象を細部まで観察し、
光と影の関係を分析することで、
立体感・質感・空間性を
精密に描き出します。
鉛筆や木炭の筆圧やトーンの
変化を繊細に操りながら、
物体の重さや存在感を
表現することを目的としています。
線は感情的な動きよりも、
安定感や論理性を重視しており、
画面全体のバランスを意識して
構成されます。
いかにモチーフの形態や構造が
理解できているかという事を
表現できるかという事ですね。
デッサンは「写す事」が目的ではなくて、
「理解する」ことによって
生まれる表現ですので、
描き手の観察力と思考力が
そのまま作品の精度として現れるのが
大きな特徴です。
スケッチの表現とは感情的表現
一方でスケッチの表現は、
感覚と瞬間性を大切にした
自由で伸びやかな描写が特徴です。
モチーフの正確な形や比率よりも、
描き手が受け取った
印象・動き・空気感を重視し、
線や筆跡にその感情やリズムを
スケッチ帳に反映させます。
それにより勢いのある線、途切れたタッチ、
ラフな陰影などがそのまま
作品の魅力となり、
見る人に生きた瞬間を伝えます。
スケッチは完成を目的とせず、
「感じ取ること」
「発想を記録すること」
などが重要となるので、
表現の幅は非常に広く、
描き手の個性が強く反映されます。
僕自身、スケッチをする際は
なるべくデッサン的な知識や
スキルを使うのではなくて、
その時の気分や環境、空気感
などを重要視しています。
デッサンとスケッチを
それぞれを使い分ける事が、
結果的に作品制作にも
反映されてくるものだと
経験的にも言える為でもありますね。
デッサンとスケッチの
それぞれの表現の違いについて
まとめると、
「デッサン=構造的表現」
であるのに対し、
「スケッチ=感情的表現」
と捉えてもらえればと思います。
4. デッサンとスケッチの制作時間の違い

デッサンの制作時間は時間をかけて行う
デッサンは、時間をかけてじっくりと観察し、
構造を理解しながら描き進める表現です。
対象となるモチーフの形・光・質感を
冷静かつ正確に分析し、
全体のバランスを確認しながら
段階的に完成度を高めていくため、
数時間から場合によっては数日かける事も
少なくありません。
特に美術教育や制作準備
としてのデッサンでは、
正確な比率や明暗の関係を
慎重に構築するために
何度も修正や確認を行ったり、
繰り返し描く作業を行なっていきます。
描き手は観察を通して対象の
「本質」
を探ることを目的としているので、
時間をかけること自体が
学びや鍛錬の一部となります。
そのため、デッサンは
描くことよりも見極めることに
多くの時間が費やされる
という風に捉えてもらえればと思います。
スケッチの制作時間は短期間で行う
スケッチは、短時間で印象や
アイデアを記録することを
目的とした描画となります。
制作時間は通常、
数分から長くても30分程度ですし、
瞬間的な感動や発想をそのまま
紙の上に写し取ります。
スケッチでは正確さよりも
スピードと勢いが重視されるため、
基本的に線はラフで陰影も最小限に
抑えられることが多いです。
屋外での風景スケッチや、
人物の動きの記録などでは
対象が変化する前に
描き終える必要があるため、
即興的で素早い判断が求められます。
そのためスケッチは、
時間をかけて完成を目指す
デッサンとは対照的に、
「その瞬間を捉えるための速描」
としての性格を持っているという事ですね。
5. デッサンとスケッチの使用される場面の違い

デッサンは教育・研究・制作で使用される描画
デッサンは、主に美術教育・作品制作の
基礎訓練・構想の精密化など、
分析的な目的で使用されます。
美術大学の入試や専門学校の授業では、
形の正確さや観察力、
構成力を評価するために
デッサンが課題として取り上げられます。
僕自身、美大入試のために
美術予備校で100枚以上
デッサンを行ってきましたね。
今になって思えば、
美大入試の試験科目だけに留まらず
創作活動をしていく上での
基礎となっていると実感しています。
また、絵画・彫刻・建築・デザイン
といった分野では、
完成作品を制作する前に
構造や光の当たり方を確認する
「設計図的な役割」
としてデッサンが用いられます。
さらに、作家自身が作品の
完成度を高めるための思考の
整理・理解の深化の手段としても
重要なものとして扱われています。
つまりデッサンとは、
理論的に作品を支えるための
基盤的プロセスとしての役割を担っており、
教育・研究・制作のあらゆる場面で
不可欠な存在
という事が言えますね。
スケッチは感情や動きを表現する描画
スケッチは、アイデアの記録・現場での
観察・感覚のメモなど、
自由で実践的な場面で多く使用されます。
たとえば風景を描くとき、
旅先での記録、建築の現地調査、
あるいは新しい作品の構想メモなど、
「瞬間を捉える」
ことが求められる状況で活躍します。
スケッチブックやノートに
素早く描きとめることで、
後の作品制作やデザイン案へと
発展させることができます。
また、スケッチは商業デザインやファッション、
漫画、映画の絵コンテなど、
実務的なクリエイティブの現場でも
幅広く用いられています。
感情や動きを生き生きと伝えるため、
創造の第一歩となる即興的な表現手段として
重宝されるのが特徴です。
デッサンとスケッチの道具の違いとは?初心者におすすめのアイテム

デッサンに使われる定番道具とは
デッサンには、細かな表現が可能な
鉛筆や木炭、練り消しゴム、擦筆(さっぴつ)
などの道具がよく使われます。
特に鉛筆はH系からB系まで
幅広い硬さのものを使い分け、
陰影や線の強弱を表現します。
また、紙も専用のデッサン紙を使い、
表面の凹凸が鉛筆のノリを良くしてくれます。
画板やイーゼルを使って、
しっかりと固定した状態で描くのも特徴です。
デッサンに最低限必要な道具については
以下の記事を参考にしてください。
スケッチに適した持ち運び便利な道具
スケッチは外で描くことも多いため、
軽くて持ち運びしやすい道具が好まれます。
特にスケッチブック、シャープペンシル、
ボールペン、水彩ペンなどがよく使われます。
個人的には、水性のミリペンや
ボールペンなどが使いやすいです。
またバッグに入るサイズの画材セットや、
折りたたみ可能なイスなども便利です。
最近ではタブレットでの
デジタルスケッチも人気がありますので、
Apple PencilとiPadの組み合わせで
どこでも描けるスタイルが増えています。
ただし、タブレットは高価なものなので、
盗難に気をつけたり
バッテリー切れ等を起こさないように
注意しながら使用した方が良いですね。
用紙や紙質の違いも大切
デッサンでは、厚手で凹凸のある紙が
推奨されます。
その理由として、鉛筆の粉が定着しやすく、
消したり重ね描きしたりしやすい
特徴がある為でもあります。
一方、スケッチでは軽くて
薄めの紙が使われることも多く、
特に外出先で描く場合は
軽量性が重視されます。
紙質によって描き心地が変わるため、
自分のスタイルに合った用紙選びも重要です。
おすすめの初心者セット紹介
初心者におすすめのデッサンセットには
以下のようなものがあります。
グラフにまとめてみたので
参考にしてみてください。
道具 | 用途 | おすすめ商品例 |
---|---|---|
鉛筆セット(6H〜6B) | 明暗の描き分け | 三菱鉛筆 ユニデッサン |
練り消しゴム | 消しながら描く | ステッドラー製 |
スケッチブック | 下書き練習用 | マルマン図案シリーズ |
擦筆(さっぴつ) | グラデーション用 | ホルベイン製 |
デッサンに必要な道具一式に関しては、
以下の記事で詳しくまとめているので
こちらを参考にしてみてください。
一方でスケッチ用には軽量で持ち運びやすい
スケッチブックや水筆ペン、
携帯用水彩絵の具セットなどが
おすすめです。
屋外でスケッチをする際の道具については
以下の記事で詳しくまとめているので、
そちらを参考にしてみてください。
コスパで選ぶ!デッサン・スケッチ向け文房具
画材は高価なものも多いですが、
コスパを考えると100円ショップや
文具店で手に入るアイテムも優秀です。
たとえば、
「ダイソーのスケッチブック」
「セリアのB鉛筆」
なども練習用には十分な品質ですね。
無印良品のシャープペンや
消しゴムも描き心地が良く、
初心者に人気です。
まずは気軽に始めてみて、
続けられそうなら専門道具に
ステップアップするのも良いと思います。
デッサンとスケッチの違いに関するよくある質問(FAQ)
デッサンとスケッチの違いについてのまとめ
今回は、デッサンとスケッチの違いについて
解説をさせてもらいました。
最後にデッサンとスケッチの違いについて
まとめると以下のものとなります。
項目 | デッサン | スケッチ |
---|---|---|
主な目的 | 形や光を正確に捉える練習 | 印象やアイデアの記録 |
重点 | 構造・陰影・空間 | 感情・雰囲気・発想 |
制作時間 | 長い(数時間〜数日) | 短い(数分〜数十分) |
完成度 | 高く作品として成立している | ラフで未完成でも良い |
使用画材 | 鉛筆・木炭などモノクロ中心 | ペン・水彩など自由 |
用途 | 技術訓練・基礎練習 | 創作準備・旅の記録など |
デッサンとスケッチは
どちらも絵を描くための技法ですが、
その目的やプロセス、
表現方法に違いがあります。
デッサンは詳細で正確な描写を追求し、
スケッチは素早く簡潔にアイデアや
印象を捉えることが求められます。
どちらの技法も、アートにおいて
重要な役割となっているので、
日頃の練習として使用するだけでなく、
上手に使い分けて絵の習得に
励んでいってくださいね!
それでは、今回はこの辺で失礼します。
✅ 電子書籍『ペン画技法解説書』
✅ メール講座『絵の描き方』
✅ デッサン道具の知識
✅ アートで生きていく為の入門書
✅ メルマガ読者特別プレゼント
など、以下より受け取る事が出来ます。
⇩ ⇩ ⇩