こんにちは。画家の小笠原です。
紀元前7世紀中ごろからアルカイック美術が始まったとされています。
この時代に作られた彫刻の特徴の一つに「アルカイック・スマイル」というものがあります。
そこには静かで穏やかな微笑みが表現されており、日本美術における大仏や仏像などにも似たような共通点が感じられますよね。(時代が違うので、直接的な関連性は不明ですが)
今回は、そんなアルカイック美術が生まれたアルカイック期についてまとめさせてもらいました。
後に続くクラシック期、ヘレニズム期に転換していく中での西洋美術の変化について、復習がてら読み進めて頂けると幸いです。
目次
アルカイック期について
アルカイック期とは、紀元前8世紀から紀元前5世紀初頭にかけての古代ギリシャの芸術の時代の事を指します。
この時期は、ギリシャの都市国家が発展し、芸術や文化が活発化した時期でした。
アルカイック期は、その後に訪れるクラシック期やヘレニズム期と比較すると、まだ初期段階の芸術的発展を経験していた時代ですが、ギリシャ芸術の基礎が確立された時期でもあります。
その為、アルカイック期の彫刻は、前方に向かって立っている男性や女性の人物像が主題となっています。
これらの彫刻には、理想化された人体の比例や動きの表現など、古代ギリシャの芸術の特徴を示しています。
また、アルカイック期の陶器や建築物などの芸術作品も豊富に残されており、その中にはギリシャの芸術の進化の過程が見られます。
アルカイック期の彫刻においては、特にアルカイック・スマイルと呼ばれる微笑みの表現が特徴的です。
この微笑みは、静かで穏やかな印象を与えることで、観察者に人物像との親近感を醸成しました。
アルカイック期は、ギリシャ芸術の発展において重要な時期であり、後のクラシック期やヘレニズム期の芸術に影響を与えました。
アルカイック期に作られた彫刻の5つの特徴
アルカイック期に作られた彫刻の特徴には、以下のようなものがあります。
理想化された人体
アルカイック期の彫刻は、理想化された人体の表現に重点を置いています。
彫刻家たちは、人体の比例やバランスを追求し、美しい体型を持つ人物像を創り出しました。
前方を向いた姿勢
多くのアルカイック期の彫刻は、前方を向いた姿勢で立っている人物像が特徴です。
この姿勢は、観察者との直接的な対話や関係性を示唆しています。
静的な姿勢
アルカイック期の彫刻は、比較的静的な姿勢が特徴的です。人物像は通常、体をまっすぐに立て、腕を体の両側に下ろしています。
これは、静謐(せいひつ)さや安定感を表現する手段として用いられました。
アルカイック・スマイル
アルカイック期の彫刻には、特徴的な微笑みであるアルカイック・スマイルが見られます。
日本の国宝でもある弥勒菩薩にもこのアルカイック・スマイルのような特徴が見られますが、見ていると心が穏やかな気分にさせられるものですね。
この微笑みには、観察者に親しみや共感を与える効果があるとされていました。
彫刻技法の発展
アルカイック期には彫刻技法の発展も見られました。
当時の彫刻家たちは、石や大理石を用いて彫刻を制作し、細部まで精巧な彫刻を行いました。
これらの特徴は、アルカイック期の彫刻が持つ美的価値や芸術的な表現に大きな影響を与えました。
アルカイック期における彫刻の「クーロス」と「コレー」について
アルカイック期の彫刻におけるクーロスとコレーは、古代ギリシャの芸術における重要な要素でした。
こちらでは、それぞれの特徴と役割について詳しく説明します。
クーロス(Kouros)
クーロスは、アルカイック期の彫刻における若い男性像を指します。
クーロスは典型的には裸で、理想化された男性の体型や姿勢が表現されます。
彫刻家たちは、人体の比例やバランスを追求し、美的な価値を追求しました。
クーロスは墓や神殿などの公共の場に立てられ、英雄や神々への敬意を表す役割を果たしました。
また、個々の人物像としてだけでなく、集団で並ぶことで、社会的な統合や共同体のアイデンティティを示す役割も担いました。
コレー(Kore)
コレー(乙女)は、アルカイック期の彫刻における若い女性像を指します。
コレーはクーロス同様に裸ではなく、ドレスや装飾品を身に着けた女性的な理想像が表現されており、女性の優美さや優雅さを称賛する意図がありました。
また、コレーは神殿や公共の場に置かれ、神々への崇拝や女神の化身として崇拝される役割を果たしており、結婚や生殖の象徴としての意味合いも持っていました。
クーロスとコレーは、アルカイック期の芸術において、理想化された男性性と女性性を象徴し、当時の社会や文化の価値観を反映していました。
アルカイック・スマイルとは?
上でも説明をしましたが、アルカイック・スマイルについて詳しく解説をしていきたいと思います。
アルカイックスマイルとは、古代ギリシャの彫刻や古代エジプトの彫刻など、古代の芸術作品に特徴的に見られる微笑みの表現です。
この微笑みには人物像が静かで穏やかな印象を与えるように意図されており、ギリシャの古代彫刻家であるアルカイック期に由来しています。
古代ギリシャの芸術において、アルカイックスマイルは特に彫刻像によく見られる特徴となっています。
これらの彫刻は、典型的には正面を向いて立ち、両腕を体の両側に下ろしています。
顔は柔和な表情で微笑んでおり、これがアルカイックスマイルと呼ばれるものです。
加えて、この微笑みは観察者に作品の人物に親しみや共感を感じさせる効果があります。
また、この微笑みは作品に生命を吹き込み、静止した彫刻像や絵画にも人間らしさと動きを与える役割を果たしているのですね。
それだけ、芸術文化と当時の人々との関わりを大切にしていたという事なのかもしれません。
アルカイックスマイルは、古代芸術の特徴の一つとして広く認識されており、古代ギリシャや古代エジプトの彫刻など、様々な文化の芸術作品に見られます。
アルカイック・スマイルの特徴を持つ彫刻
アルカイック・スマイルの特徴を持つ作品には、古代ギリシャの彫刻や古代エジプトの彫刻などがあります。
以下では、代表的な作品のいくつかを挙げます。
クーロス像(Kouros)
クーロス像は、アルカイック期に制作された若い男性の彫刻像で、典型的なアルカイックスマイルが見られます。
これらの像は、正面を向いて立ち、腕は体の両側に下げられ、顔は微笑んでいます。
カリアティード(Caryatid)
カリアティードは、建築の柱の代わりに女性の彫刻像が用いられた装飾的な要素です。
アルカイック期のカリアティードは、柔らかな表情や微笑みを持つことがあります。
その後のクラシック期にもカリアティードを用いた神殿が作られますが、こちらは「コントラポスト」と呼ばれる片足に重心をかけてS字曲線を作る彫刻が造られました。
エジプトの彫刻
古代エジプトの彫刻にもアルカイックスマイルの特徴が見られます。
例えば、エジプトのファラオや女神の彫刻像は、静かな微笑みを浮かべています。
【補足】
古代エジプトのファラオ像において、アルカイックスマイルという表現はあまり一般的ではありませんが、いくつかのファラオ像には微笑みや穏やかな表情が見られます。
これは、ファラオが神聖な存在であると同時に人間であることを強調するために用いられた可能性があります。
古代エジプトのファラオは、神聖な王権を象徴し、神として崇拝されていました。
ですが、同時に彼らは人間であり、人々とのつながりやコミュニケーションを重視する必要がありました。
そのため、一部のファラオ像では、微笑みや穏やかな表情が彫刻され、ファラオが人々に親しみや共感を与えることが意図されていた可能性があります。
アルカイックスマイルと同様に、ファラオ像の微笑みも観察者に対して親しみや共感を喚起する役割を果たし、ファラオの神聖さと人間性の両方を表現する手段として機能していたと考えられます。
これらの作品は、アルカイックスマイルを持つことで、静かで穏やかな印象を与え、観察者に親しみや共感を生み出す効果をもたらしています。
まとめ
アルカイック期に作られた彫刻について、またそれらの彫刻の特徴となるアルカイック・スマイルについてまとめさせてもらいました。
アルカイック期に作られた彫刻には、大理石であるにも関わらず、生命が吹き込まれた作品が作られるようになりました。
「芸術」というものの根源的なテーマそのものが、「この時代にすでに確立していたといっても過言ではない」と、個人的には思います。
アルカイック期の彫刻を観る機会がありましたら、事前知識として当記事を参考にしてみてもらえると幸いです。
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