こんにちは。画家の小笠原です。
古代ギリシャ時代は、西洋美術史において基礎となる一時代を築き上げました。
この時代を代表する建造物といえばギリシャのアテネにあるパルテノン神殿が有名ですね。
奈良にある法隆寺の柱にも、パルテノン神殿に見られる柱と同じ共通点があるという事はご存知の方も多いかと思われます。
今なお人々を魅了する建造物や彫刻が生まれた古代ギリシャ時代ですが、今回はこの時代の建築について触れていきたいと思います。
古代ギリシャ人にとっての「美」とは?
古代ギリシャ人にとっての美は、調和と均整が重視されました。
彼らは理想的な体型や顔立ちを数学的な比率で表現し、芸術や建築にも反映させました。
例えば、パルテノン神殿の設計には黄金比が用いられています。
また、精神的な美しさも重要視され、知恵や勇気などの徳が美の一部と考えられていました。
このように、古代ギリシャでは物理的な美と精神的な美が一体となって評価されていたのです。
古代ギリシャ建築の特徴
ここでは、古代ギリシャ建築の特徴について解説をしていきたいと思います。
幾何学的な美しさ
古代ギリシャ建築では、幾何学的な美が追求されていました。
ギリシャのパルテノン神殿は、幾何学的な美しさの典型です。
この神殿では黄金比を活用し、建築全体に調和と均整をもたらしています。
例えば、柱の間隔や高さ、幅などが精密な数学的比率に基づいて設計されています。
また、柱は中央がわずかに膨らむエンタシスという技法が用いられ、視覚的な錯覚を補正して完全な直線に見えるよう工夫されています。
これにより、パルテノン神殿は単なる建築物以上に、古代ギリシャの美学と数学的な知識が融合した芸術作品となっています。
【幾何学とは?】
幾何学は、形や空間に関する数学の分野です。点、線、平面、図形などの基本的な概念を扱い、それらの性質や関係を研究します。
幾何学は、図形の形や大きさ、角度、距離、面積、体積などを測定し、それらを用いて問題を解決します。日常生活やさまざまな分野で幾何学の考え方や概念が活用されています。
黄金比
黄金比は、数学的に美しいとされる比例の一種で、約1:1.618の比率の事を言います。
この比率は、フィボナッチ数列や自然界の多くの形状に見られます。
古代ギリシャの建築や美術、特にパルテノン神殿において黄金比が使用されていると考えられています。
黄金比は、人間の目に調和と美しさを感じさせる特性を持つため、芸術やデザイン、建築において広く応用されています。
この比率は「神聖な比例」とも呼ばれ、自然界や人間の文化の中で永続的な魅力を持つ概念として、今日においても扱われています。
オーダー
古代ギリシャにおけるオーダーとは、建築様式のことを指し、
- ドーリス式
- イオニア式
- コリント式
これら3つが代表的な例として挙げられます。
ドーリス式は力強くシンプルなデザインで、パルテノン神殿に代表されます。
イオニア式はエレガントで細長く、柱頭に渦巻き模様の装飾が特徴で、エレクティオン神殿が例です。
コリント式は最も華やかで、アカンサスの葉をモチーフにした柱頭が特徴で、ゼウス神殿などに見られます。
これらのオーダーはギリシャ建築の美しさと技術の高さを示しています。
【補足】
「オーダー」という言葉の語源は、ラテン語の「ordo」(順序、配列)に由来します。この語は古代ギリシャ語の「τάξις」(タクシス)に相当し、同様に「秩序」や「配列」を意味しました。
古代ギリシャの建築様式において、各オーダーはそれぞれ特定の規則や比例に基づいて設計されており、この規則性や秩序が「オーダー」という名称に反映されています。
建築のオーダーは、建物の美しさと調和を生み出すための基本的な枠組みとして重要な役割を果たしていました。
ドーリス式
ドーリス式は、古代ギリシャ建築の三大オーダーの一つで、最も古く、シンプルかつ力強いスタイルです。
特徴として、柱は基部がなく、直線的で力強いプロポーションを持ちます。
柱頭には装飾の少ない円盤状のエキヌスと、方形のアバクスがあります。
フリーズ部分にはトリグリフとメトープが交互に配置され、幾何学的な美しさを醸し出します。
ドーリス式は紀元前7世紀頃に発展し、ギリシャ本土や南イタリア、シチリアなどに広まりました。
代表的な建築物として、アテネのパルテノン神殿やオリンピアのゼウス神殿があります。
イオニア式
イオニア式は、古代ギリシャ建築の三大オーダーの一つです。
特徴として、柱の上部にある装飾的な渦巻き模様(ボリュート)が挙げられます。
柱はスリムでエレガントなプロポーションを持ち、基部に装飾が施されています。
イオニア式は紀元前6世紀頃にイオニア地方で発展し、後にギリシャ本土やエーゲ海の諸島に広まりました。
アテネのエレクテイオン神殿やエフェソスのアルテミス神殿などが、イオニア式の代表例として知られています。
この様式は優美さと装飾性で評価されています。
コリント式
コリント式は、古代ギリシャ建築の三大オーダーの一つで、最も装飾的かつ華麗なスタイルです。
特徴として、柱頭にアカンサスの葉の装飾が施され、細部にわたる彫刻が見られます。
柱はスリムで、基部や柱身に細かい装飾が施されることが多いです。
コリント式は紀元前5世紀後半に登場し、特にヘレニズム時代とローマ時代に広く普及しました。
代表的な建築物として、アテネのオリンピエイオン神殿やローマのパンテオンがあります。
この様式は優雅で豪華な印象を与え、宮殿や神殿などに用いられました。
古代ギリシャを代表する建築
古代ギリシャを代表する建築物をいくつか挙げさせていただきますね。
パルテノン神殿
アテネにあるアクロポリスの最も有名な神殿で、古代ギリシャ建築の傑作として知られています。
パルテノン神殿は、古代ギリシャのアテネに位置するアクロポリスの中心的な建築物です。
紀元前5世紀に建設されたこの神殿は、アテーナ女神に捧げられました。
パルテノン神殿は、古代ギリシャ建築の最高傑作として称賛されており、その優雅なデザインと彫刻で知られています。
イオニア式とドーリア式の要素を融合させた独特の様式で建てられ、大理石で装飾されています。
アテーナ女神の巨大な金箔装飾の彫刻であるアテナ・パルテノスが神殿内に安置され、その美しさは古代から称賛されています。
パルテノン神殿に関する詳しい内容については、次の項目でも解説します。
デルフィのアポロン神殿
デルフィに位置し、古代ギリシャの聖地であるデルフィの中心的存在です。
アポロン神殿は、古代ギリシャの宗教施設で、ギリシャ神話の太陽神であるアポロンに捧げられており、主に予言と医術の神として崇拝されていました。
最も有名なアポロン神殿はデルフィにあり、聖地であるデルフィの中心に位置していました。
この神殿は、ドーリア式の建築様式で建てられ、美しい円柱と装飾的な彫刻で知られています。
デルフィのアポロン神殿は古代ギリシャの文化と宗教の中心的存在であり、多くの巡礼者や参拝者が訪れました。
アテネのエレウシスのテレアイオン
アテナイの郊外にある神秘的な宗教施設で、エレウシスの秘儀が行われました。
アテネのエレウシスのテレアイオンは、古代ギリシャのアテナイ近郊に位置する宗教施設で、エレウシスの秘儀が行われた場所です。
この施設は、デメテルとその娘ペルセポネーに捧げられたものであり、古代ギリシャの宗教儀式の中心的な場でした。
秘儀は神秘的な性格を持ち、参加者に神秘的な啓示を与えると信じられていました。
この施設は、古代ギリシャにおける宗教的・精神的な実践の重要な一端を担っていました。
イラクリオンのクノッソス宮殿
イラクリオンのクノッソス宮殿は、クレタ島に位置するミノア文明の中心的な宮殿です。
この宮殿は、紀元前2千年紀から1千年紀にかけて栄え、当時のミノア文明の政治的・宗教的中心地でした。
クノッソス宮殿は、複雑な迷路状の構造や美しい壁画で知られており、ミノア文明の高度な文化や芸術の発展を物語っています。
また、ミノア文明の都市としての生活や経済活動の様子も窺える遺跡として、考古学的にも重要な場所です。
リンドスのアクロポリス
リンドスのアクロポリスは、ギリシャのロドス島にある要塞と神殿が融合した歴史的な建築物です。
古代ギリシャの遺跡の一つであり、リンドスの町の中心部に位置しています。
アクロポリスには、古代の要塞建築や神殿があり、特にアテーナー・リンディア神殿が有名です。
この神殿は、アクロポリスの頂上に位置し、美しい海岸線の景色を見下ろしています。
リンドスのアクロポリスは、ギリシャ建築の特徴を示す見事な遺跡の一つとして、観光客や歴史愛好家に人気があります。
パルテノン神殿はなぜ美しいの?
パルテノン神殿は、古代ギリシャのアテナイに位置し、美しさと壮麗さで知られる建築物です。
この神殿は紀元前5世紀に建てられ、アテナイの守護女神アテナを祀るためのものとして建設されました。
ここでは、古代ギリシャ建築を代表するパルテノン神殿の美しさについて、いくつかのポイントを挙げます。
優雅なプロポーション
パルテノン神殿のデザインは、古典的なドーリス式建築様式の典型です。
高さと幅の比率、柱の配置など、すべてが完璧なバランスを保っており、見る者に強い美的印象を与えます。
【ドーリス式についての追加補足】
ドーリス式建築様式は、古代ギリシャ建築の三大オーダー(建築様式)の一つで、最も古く、力強さと簡素さが特徴です。
主に柱のデザイン、柱の上に置かれる水平な梁(エンタブレチュア)、柱の基部、全体の印象といったものが特徴となっています。
この様式は、簡潔さと力強さを兼ね備えた美しさを持ち、多くの古代ギリシャ建築物に採用されました。
彫刻の精巧さ
神殿の外壁や柱には、精巧な彫刻が施されています。
特に、東西のペディメント(切妻屋根の三角形部分)には、ギリシャ神話のエピソードが描かれた彫刻群があり、その細部まで丹念に表現されています。
建材の選定
パルテノン神殿は、主にペンテリック大理石を使用して建造されました。
この大理石は、その純白の色合いと光沢が特徴で、日光を浴びると美しく輝きます。
建築技術の高さ
パルテノン神殿には、柱の中間部分がわずかに膨らんでいるエンタシスという技法が使われています。
これにより、遠くから見たときに柱がまっすぐに見え、視覚的な美しさが強調されます。
【エンタシスとは】
エンタシスとは、古代ギリシャ建築において、柱のデザインに用いられる技法の事を指します。この技法により、柱の中間部分がわずかに膨らませられています。
視覚補正、柱の膨らみ、美的効果をもたらすものとなっており、パルテノン神殿をはじめとするドーリス式建築でよく見られるものとなっています。
歴史的背景
パルテノン神殿は、アテナイの黄金時代を象徴する建築物として知られています。
その壮大さと美しさは、当時のギリシャの文化、芸術、そして技術の頂点を示しています。
これらの要素が組み合わさり、パルテノン神殿は古代ギリシャ建築の最高傑作とされ、今日でも多くの人々を魅了し、観光に訪れる人が絶えません。
古代ギリシャにおける都市構造
アクロポリス
アクロポリスは紀元前5世紀に最盛期を迎え、パルテノン神殿やエレクティオンなどの重要な建造物が立ち並んでいます。
アクロポリスは、アテネの文化、政治、宗教の中心地として機能しました。
ユネスコの世界遺産にも登録されており、古代ギリシャ文明の象徴的な遺跡として、多くの観光客が訪れます。
壮大な建築と歴史的な価値から、学術的研究や文化的保存の対象ともなっています。
アゴラ
アゴラは古代ギリシャの都市国家における公共広場で、政治、商業、宗教、社会的活動の中心地でした。
市民が集まり議論や討論を行う場としても機能し、民主主義の発展に重要な役割を果たしました。
アゴラには市場や神殿、公共施設があり、人々の日常生活や政治活動が行われていました。
現在では、多くの遺跡が残されており、古代ギリシャの文化や歴史を学ぶための重要な場所となっています。
ストア
古代ギリシャの都市構造において、ストア(stoa)は重要な公共建築物でした。
ストアは、柱廊を持つ建物で、市場や公共集会の場として使用されました。
アゴラ(市場広場)に位置し、市民が集まり、商取引や政治的討論を行う場所でした。
ストアは屋根付きで、雨や日差しを避けるために利用され、都市の社会的、経済的な活動の中心地となっていました。
代表的な例として、アテネのアゴラにあるストアがあります。
まとめ
今回は古代ギリシャ建築についてまとめさせてもらいました。
西洋美術の基礎として確立されただけでなく、日本への影響もみられて興味深いですね。
それでは最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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