こんにちは。画家の小笠原です。
古代ギリシャ彫刻を語る上で、「コントラポスト」という技法があります。
前回記事にしたアルカイック期においては、筋肉や身体の造りが自然な形で彫刻が造られた事に対し、クラシック期に入ると、身体のねじれを生じさせ、より一層リアルな人体の表現をする事が出来るようになりました。
そこで重要なのがコントラポストという技法が重要になってくるのですが、今回はそれについて解説をまとめさせてもらいました。
目次
コントラポストとは?
コントラポスト(contrapposto)は、イタリア語で「対抗する」や「対立する」といった意味を持つ言葉です。
この言葉は、古代ギリシャやルネサンス期の彫刻や絵画で使われる技法を指し、立っている人物の姿勢における自然なバランスと動きを表現するために使われました。
現代でも人物のイラストを描く際に、立ちポーズとしてコントラポストを使う事ができます。
棒立ちだとどうしても不自然に見えてしまうので、自然な立ち姿を描く上でコントラポストを意識して描くのがオススメです。
コントラポストという技法について
コントラポストは、古代ギリシャの彫刻技法の一つで、立っている人物のポーズを自然に見せるための技法です。
この技法は、体の重心を片足に乗せ、反対側の足を軽く曲げることで、肩と腰が自然な曲線を描くようにしています。
この結果、体の一部が緊張し、他の部分がリラックスした状態になり、全体としてバランスの取れた美しい姿勢が生まれます。
特に、古代ギリシャの彫刻家たちが人間の体の自然な動きを表現するために用いた技法で、有名な例として、ポリクレイトスの「ドリュポロス(槍を持つ人)」が挙げられます。
この技法は、後のルネサンス期にも再評価され、ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチなどの芸術家たちによっても多用されました。
コントラポストの特徴
コントラポストの特徴として、以下の点が挙げられます。
身体の重心の変化
コントラポストでは、人物が片足に体重をかけることで、自然なバランスが生まれます。
通常、体重がかかる足(主軸足)は直立し、もう一方の足(動脚)は軽く曲げられます。
この動作によって、身体全体が微妙に傾斜し、自然な姿勢が形成されます。
対角線の動き
コントラポストでは、肩と腰の高低差によって対角線が形成されます。
例えば、片方の肩が高く、反対側の腰が高い場合、斜めに伸びる対角線が生まれます。
この対角線は、静的な姿勢に動きを与え、視覚的な興味を引きます。
自然なバランス
コントラポストは、人体の自然な動きやバランスを模倣しようとする芸術家のリアリズムの追求の一環として重要な役割を果たしています。
この技法は、立体的な彫刻や平面的な絵画において、人物像をよりリアルに描写するための手段として利用されています。
それにより、緊張とリラックスのバランスが取れた姿勢となります。
対称性と非対称性
コントラポストでは、肩と腰が対称的ながらも非対称的な位置に配置されます。
通常、片方の肩が高く、もう片方が低くなり、同様に腰も一方が高く、もう一方が低くなります。
これにより、身体の動きやバランスが強調され、よりリアルな姿勢が表現されます。
この技法により、彫刻や絵画において人物の姿がより生き生きと表現されるようになりました。
コントラポストが使われている例
以下は、コントラポストが使われている具体的な例です。
ミケランジェロの「ダヴィデ像」
ルネサンス期の巨匠であるミケランジェロが制作した「ダヴィデ像」は、典型的なコントラポストの姿勢を持っています。
彫像は片足に体重をかけ、もう一方の足が軽く曲がっています。
これにより、ダヴィデの体は自然なバランスと動きを表現しています。
ポリクレイトスの「ドリュポロス」
古代ギリシャの彫刻家ポリクレイトスの作品である「ドリュポロス」は、古代ギリシャ彫刻におけるコントラポストの傑作とされています。
この彫像は、片足に体重をかけ、軽く曲げられたもう一方の足によって、動的な姿勢が表現されています。
レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」
ルネサンス期の巨匠であるレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」も、コントラポストの要素を含んでいます。
モナ・リザの体は微妙に傾斜し、片方の肩がやや上がり、もう一方が下がっています。
これにより、彼女の姿勢は柔らかで自然な動きを感じさせます。
カミーユ・クローデルの彫刻作品
フランスの彫刻家カミーユ・クローデルの作品にも、コントラポストの影響が見られます。
彼の彫像は、人体の動きやバランスを表現するために、独特の姿勢を取っています。
例えば、「泉の思い出」と呼ばれる作品は、流れるようなラインと動的なバランスが特徴です。
これらは、芸術史においてコントラポストが使われている一部の有名な例です。
まとめ
今回はコントラポストについて解説をさせてもらいました。
自然な立ち振る舞いをする事で、観る人に親近感を持たせるだけでなく全体としてバランスの良い仕上がりにする事が出来るようになりました。
ポージングひとつをとっても、作品にする上で構図や絵の印象も大きく変わってくるので、意識して描く事が望ましいですね!
では、今回はこの辺で失礼します。
✅ 電子書籍『ペン画技法解説書』
✅ メール講座『絵の描き方』
✅ デッサン道具の知識
✅ アートで生きていく為の入門書
✅ メルマガ読者特別プレゼント
など、以下より受け取る事が出来ます。
⇩ ⇩ ⇩