こんにちは。ペン画家の小笠原です。
ペン画で建物を描く技術は、緻密な計画と練習が必要です。
突き詰めて言えば、建物の設計を紙面上で行うようなものでもありますからね。
もちろん、実際に建造物を建てるという事ではありませんが、同じような気持ちで取り組んでいかないと、どこかしらに違和感が生じてしまうものです。
今回の記事では、ペン画の建物の描き方について、各ステップをより解説をしていきたいと思います!
ペンで建物を描く際に参考にしていただけると幸いです。
目次
【ステップ1】構図決めとパースペクティブ(遠近法)
まずは建物を描く前に、「どの角度から描くか?」「どこに焦点を当てるか」について決めていきます。
建物を描く上で、遠近感を出すために消失点(「vanishing point 」とも言う)を設定すると効果的です。
この消失点(VP)を使うことで、建物の立体感や奥行きを表現しやすくなります。
また、ペン画で建物を描く際に、透視図法を正確に理解することはとても重要です。
以下では、3種類の透視図法についてそれぞれ解説をしていきます。
一点透視図法
一点透視図法は、建物が正面から見える場合、もしくは室内空間を描く際に使います。
画面内に消失点が一つだけであり、すべてのパースラインがその一点に収束する形となっています。
一点透視図法は基本の透視図法となり、シンプルで簡単なので、初心者に向いています。
二点透視図法
二点透視図法は、建物の角度を斜めから見たときに使います。
この図法は、他の透視図法よりもよく使われる図法でもありますね。
二点透視図法は、建物の立体感を強調するのに適しています。
これにより、建物を自然な形で画面内に描写する事が出来るようになります。
二つの消失点が存在し、建物の水平線がそれぞれの消失点に向かって収束します。
一般的にはこれらの消失点は画面の外に位置する為、エスキースやスケッチの段階でパースラインを決めていきます。(画面内に消失点が2つあると、パースがキツくなってしまい、画面内がかなり窮屈になってしまうからです)
三点透視図法
三点透視図法は、高い建物を見上げたり、俯瞰図(上から見下ろした図)を描く場合に使います。
先ほどの二点透視図法における2つの水平な消失点に加えて、垂直方向にも消失点が加わるため、さらにリアリティのある描写が可能です。
上下方向のパースがつく為、建物のスケール感を表現する上で効果的となります。
これらの透視図法を使う事で、建物を写実的に描く事ができるようになります。
透視図法に関しては、以下のまとめ記事にそれぞれまとめているので、是非とも参考にしてみてください。
【ステップ2】建物の基本形を描く
はじめの鉛筆で下描きを行う際には、シンプルな形から始めると良いです。
建物を基本的な幾何学形(立方体、直方体、円柱など)として捉え、それを組み合わせるイメージで描いていきます。
このはじめの段階では細部にこだわらず、大まかなシルエットとバランスを確認します。
徐々に形が決まってきたら、先ほどの透視図法を当てはめて描いていく事で、構図としても見栄えが良くなりやすいです。
例: シンプルな家を描く場合
- 大きな直方体を描いて家の本体を表現します。
- 屋根は三角形や台形を使って表現します。
- この時点で消失点を意識して、遠近感が自然に見えるようにします。
【ステップ3】ペンの種類と線の使い方
ペン画では、ペンの種類や線の描き方によって、作品の印象が大きく変わる為、ペンの種類にも注意が必要です。
ミリペンやボールペン、付けペン(丸ペン、Gペン等)など、さまざまなペンを使い分けることで、線の質や表現の幅を広げることができます。
以下では、いくつかの基本的な技法をご紹介いたします。
ハッチング
ハッチングとは平行線を引いて影や質感を表現する方法です。
線を密にすることで暗い部分を表現し、逆に線を少なくすることで明るい部分を表現します。
クロスハッチング
クロスハッチングとは、先ほどのハッチングの交差する線を使って、より濃い影や質感を表現する方法です。
複数の角度で線を交差させることで、深みのある陰影を作り出します。
点描法
点描法とは、小さな点を使って影や質感を表現する方法です。
線とは異なり、柔らかい影を表現するのに適していますが、非常に時間がかかる技法です。
特に広い面を塗ろうとすればする程、それに比例して時間が膨大にかかってしまいます。
なので、一般的にはクロスハッチングと組み合わせて描いていく事が主流となります。
【ステップ4】建物の周辺環境
建物を描く際は、建物の描写だけでなく、周囲の環境の描写をする事も絵として存在感を表現するポイントとなります。
周囲に自生している植物や植栽、建物に向かうまでの小道などを描く事で、存在感を演出する事が出来るようにもなります。
また、画面内での空の比率も加味する事で、絵の印象が変わります。
画面内で空の割合が高ければ、風景の一部として建物が存在している印象となりますが、反対に空の比率が小さければ建物の細部えのこだわりを演出する事が出来ます。
このような周辺環境の描き方によって、最終的な完成も変わってきます。
【ステップ5】細部の描写
建物の細部を描く際には、建築様式や素材感をしっかり観察して描写することが重要です。
例えば、レンガ造りの建物であれば、レンガ一つ一つの質感を表現するために、細かい線や点を使って質感を描写していくといった形です。
それでは、各パーツについてみていきます。
窓とドア
窓枠やドアといった建具は、建物のアクセントとなる部分です。
これらを描く事により、建物としての存在感を高めていく事が出来るようになります。
また、平面ではなく立体感を意識しながら、ガラスの反射や窓枠の厚みなども描き込みをしていく事で、より写実的な絵を描く事となります。
屋根や外壁の素材感
屋根瓦や壁のテクスチャーを表現するためには、パターンを繰り返し描くことがポイントです。
均等な間隔で描くことで、建物に一貫性を持たせます。
同じようなパターンが続くので、精度と忍耐力が必要になりますが、仕上がった際は一種の達成感に満たされますね。
【ステップ6】影と光の描写
デッサンで描くモチーフと同様に、影を描くことで、建物の立体感が増します。
影の部分は線を密に描くことで暗く見せ、光が当たる部分は線を少なくして明るく見せます。
まずは光源となる太陽光の位置を決め、それに基づいた影をつけていきます。
光が当たる部分を明るく、光が届かない部分を暗く描くことで、建物がリアルに見えます。
一般的に、建造物は太陽の位置を計算して設計がなされているので、機能性だけでなく絵としても魅力的に映えやすいです。
また、影を描く際は、主にクロスハッチングを使う事で、影の濃淡を効果的に表現できます。
影が濃い箇所ほど線同士の間隔を狭めたり、複数の方向の線を描き足していきます。
このような影の描写は、建物の立体感を引き立てる重要な要素です。
柔らかい影と硬い影
曇りの日などの光が柔らかい場合や、晴天や夏の強い日差しのような光が硬い場合で影のつき方が異なります。
柔らかい影を描く場合は、輪郭線をはっきりと描き過ぎず、線を少しぼかすようにして、境界がはっきりしないように描きます。
硬い影を描く場合は、はっきりとした線で影の輪郭を強調するように描く事がポイントです。
【ステップ7】バランスと仕上げ
最後に、全体のバランスを確認します。
ペン画は一度線を描くと修正が難しいため、慎重に仕上げることが重要です。
全体を見直し、必要に応じて影を深くしたり、ディテールを追加していきましょう。
さらに、建物だけでなく背景や周囲の環境も描くことで、より自然な形で建物が見えるようになります。
遠景にある山や木、近くの道や歩道などを追加することで、建物の奥行きや存在感が引き立ちます。
まとめ
今回は、ペン画で建物の描く手順とコツについて解説をしていきました。
これらの技法を繰り返し練習することで、ペン画で建物を描くスキルが向上します。
最初のうちは装飾が施されている建築よりも、なるべくシンプルな建物から始め、徐々に複雑な建物やディテールに挑戦していくことをおすすめします。
今回の記事の内容が、制作に役立ててもらえると幸いです。
それでは、今回はこの辺で失礼します。
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