こんにちは。ペン画家の小笠原です。
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僕自身、現在は主に動物をモチーフとした画風となっていますが、初期の頃は空想の建造物や風景などを描いておりました。
ペンで風景を描く際に、より高度なテクニックや詳細に注意を払うことで、作品に深みや独自性を持たせることができます。
そこで今回の記事では、ペンで描く風景画の具体的な技法であったり、考慮すべきポイントについてをさらに詳しく解説します。
風景画は一つの作品としても見応えのあるジャンルでもあるので、参考にして頂けると幸いです。
目次
ステップ1:素材と道具の選び方
ペンの種類
細かい線を描くために、ミリペンやボールペン、丸ペンといった細いペンを使うのが一般的です。
これらは広く使われているペンでもあるので、画材屋さん、もしくはネット通販でも気軽に購入する事が出来るものでもありますね。
ミリペンの場合、ペンの太さは細いものだと0.03mmから0.8mmまでありますが、太めのペンだと1mmから3mmといった太さのペンがあります。
風景画を描く際には、複数の太さのペンを使い分ける事で、奥行きや質感を表現しやすくなります。
もちろん、1種類の太さだけを使っても構いませんが、太さを変えるだけで奥行き表現を楽に出来たりもするので、自分の使いやすいペンを使うと良いですね。
イラストや漫画といった線画で表現をする場合は、太さを変える事でより奥行き表現を容易にする事が出来たりもします。
紙の選び方
ペン画で使う紙に関しては、なるべく表面が滑らかな紙の方が、ペンのインクのにじみを防ぎ、細かいディテールを描くのに適しています。
例えばケント紙やポスター紙など、表面の凹凸がほとんど無い方がペン先が引っかからずに滑らかに描きやすいです。
また他にも、アート用のスケッチブックやインク専用の紙を使うのがおすすめです。
ペン画に適している紙は比較的安価で購入する事も出来るので、お財布にも優しいですね。
ステップ2:構図を決める
風景を描く際の構図選びは、作品の魅力を大きく左右します。
視線を引き込む構図や、バランスの取れたレイアウトを意識することで、よりダイナミックな風景画を描けます。
特に、縦の構図にするか横の構図にするかで絵の印象もかなり変わってきます。
「自分が描きたいイメージを描く際にどちらを選べば良いのか?」
という事を意識しながら構図を決めていくと良いでしょう。
また、建造物の構図選びに関しては、以下の記事でまとめているので、コチラも参考にしてみてください。
スケッチ
まずは鉛筆で軽くスケッチをしつつ絵の要所要所にアタリをつけていきましょう。
この段階では大まかな構図を決め、主要な要素の配置を考える作業となります。
絵の中で遠景、中景、前景といったバランスを意識して、奥行きのある構図を作ることが重要です。
この3段階を意識して描くだけでも、空間や奥行きの表現力がかなり変わってきます。
アイレベルと焦点
描きたい風景の中で、アイレベルをどこに置くかを決めます。
アイレベルというのは『視点の高さ』という意味で、このアイレベルの設定位置によって、見下ろしたり、見上げたりといった構図に変化します。
アイレベルの設定後、消失点に向かって線を引くことで、遠近感を出すことができます。
これに関しては透視図法の知識が必要となってきますが、風景を描く上でとても大切な技法でもあるので、是非とも習得をしておく事をオススメします。
黄金比や三分割法
黄金比や三分割法といった構図法則を使うことで、バランスの取れた美しい風景を描くことができます。
主要なオブジェクト(木、山、建物など)を黄金比や三分割法の交点に配置することで、視覚的なバランスを保つことができます。
黄金比に関しては、以下の記事で詳しく解説をしているので、コチラも参考にしてみてください。
自然な視線誘導
例えば、道や川を構図に入れることで、見る人の視線を画面内の特定のポイントに誘導できます。
あるいは、手前に植栽を加える事で、「回り込む」という空間を演出する事も可能です。(ただし、道を塞ぐような配置にしてしまうと、絵として見づらくなってしまいます)
このように、視線の流れを意識した構図を作ることで、画面全体がまとまりのある印象になります。
ステップ3:線の使い方
アウトラインの描写
スケッチで大まかな線を描いたら、今度はその線に沿って、ペンを使ってアウトラインを描いていきます。
いわゆる『線画』というもので、全体的な絵の『下絵』のようなイメージを持ってもらって構いません。
この際に、重要な部分から描き始めると全体のバランスが取りやすくなります。
構図の中に建物が含まれており、それをメインで描く場合は、建物の配置を決めてから描くといったイメージです。
線画を描いたら、そのままペンを使って明暗および質感表現などを行なっていきます。
この際に、ペンだけでなく水彩絵の具を使って着彩をしていく方もいます。
※全てペンで描いていくのは時間と労力的にも大変ですし、水彩絵の具を使うと雰囲気も出るので、このまま着彩をするのでも構いません。
線の太さを工夫する
手前にあるオブジェクト(物体)には太い線を使い、奥のものには細い線を使う事で、遠近感や立体感を出しやすくなります。
太さの違うペンを使ったり、筆圧を変える事で線の太さをコントロールする事が可能です。
また、曲線や直線を使い分けることで、自然な形を表現する事もできます。
特に自然界にある植物や木、川、岩、雲の形など、直線では描けないモチーフと人工的な直線とを対比し、使い分けるようにしていきましょう。
ステップ4:陰影の付け方
ハッチングとクロスハッチング
ペン画で陰影をつけるには、細かい線を引く「ハッチング」や、交差させて描く「クロスハッチング」を使います。
これらの技法は、ペン画を描く上で基本的な技法の一つでもあるので、メインで使用して描いていく事となります。
影を描く部分には、線を密集させることで暗さを表現し、明るい部分では線を少なくして光の感じを出すといったイメージです。
また、筆圧の濃さによって陰影を変える事も可能です。
ハッチング、クロスハッチングを使いつつ、これらを掛け合わせていく事で、より陰影表現をする事が出来るようにもなりますね。
ステップ5:異なる質感の表現
ペン画では、風景のさまざまな要素(木、岩、草、水など)の質感を異なる描写方法で表現することが重要です。
木の幹、草、雲などの異なる素材感を表現するために、さまざまな線のパターンを使います。
例えば、木の葉は短い曲線、草は細かい点や短い線で表現できるといった感じです。
異なる質感を表現することで、作品に多様性とリアリティを加えていく事が出来ます。
木の幹
木の幹は縦に長い線や不規則な線を使って、木目やひび割れを表現します。
多少雑な線になっても、むしろそれが素材を表現する上でプラスに働く事もあります。
ランダムな形の線を描く事で、樹皮の粗さや朽木を表現する際にも効果的ですね。
草や葉
草や葉は短い曲線や点描を使って、細かいディテールを描いていきます。
自然なランダムさを持たせるため、線の長さや方向を少しずつ変えて描くと良いです。
水の流れ
水の表現には、波や流れを描くために曲線や連続した細い線を使います。
川、谷、海の水の流れに沿った線を描いていきます。
反射や動きを示すため、明暗を強調する場所や、線を少なくする場所をバランスよく配置すると効果的です。
ステップ6:遠近感の表現方法
風景画において、遠近感をしっかり表現することが作品全体の奥行き感を高める事に繋がります。
遠近法については、ペン画だけでなくすべての技法において使う事が出来るので、ペン画に限らず他の技法で描く際にも意識して描くようにしましょう。
ペン画においては、線の使い方や影の付け方で遠近感をコントロールできます。
線の強弱
遠くにあるオブジェクトは、薄く細い線で描くことで距離感を出していきます。
これは遠近法だけでなく、空気遠近法によって遠くの景色ほど淡く薄い表現になる為です。
逆に、手前にあるものは太く濃い線を使って、近くにあることを強調します。
細部を細かく描いてあげる事で、絵の奥行きや距離感をより強調して描く事が出来るようになっていきます。
手前と奥の演出
手前のオブジェクトが奥のオブジェクトを部分的に隠すように描くことで、自然な奥行きを表現できます。
これは木々や葉っぱ、建物、山々の配置などに効果的です。
なるべく邪魔になりすぎないよう、一部分を隠す事で、絵的にもバランスよく収まりやすくなります。
ステップ7:光と影の表現
光と影の描写は、風景画における立体感や深みを演出することが出来ます。
ペン画においては、陰影をつけるために線や点を用いて段階的に明暗を表現していく事となります。
クロスハッチング
コチラの画像のように、異なる角度の線を重ねて描くことで、より濃い影を作り出すだけでなく、質感の演出をする事も出来ます。
岩のくぼみでえあったり、植栽の光が届いていない箇所を描くといったイメージです。
影の部分には線を密に描く、あるいは塗りつぶすなどをし、光が当たる部分では可能な限り線を少なくして表現をしていきます。
この技法を使うことで、複雑な光の描写をペン画においても再現する事が出来るようになります。
グラデーションの効果
線の間隔を徐々に広げたり、クロスハッチングの角度を変えたりすることで、スムーズな明暗の移り変わり(グラデーション)を表現する事ができます。
加えて、筆圧の調整をする事で、グラデーションの幅を広げる事が出来るようにもなります。
グラデーションに対する意識を持つ事で、黒一色でのモノクロ画であっても、絵の奥行きを持たせる事が出来ますし、表現の幅も広がります。
また、グラデーションを理解する事で、カラー作品を手がける上での基礎にもなるので、必修項目として習得しておくようにしましょう。
ステップ8:細部の描き込みとシンプルさのバランス
ペン画で風景を描く際、ディテールを描き込むことは重要ですが、全体のバランスを保つためには、詳細とシンプルさのメリハリとバランスを取ることが大切です。
フォーカルポイント(一番目がいく箇所)
作品の中で特に目立たせたい部分の描き込みをする事で、自分が描きたい箇所を強調して描く事が出来ます。
これは「主役」と「脇役」という観点にも通じる部分がありますが、絵の中で目立たせたい箇所ほど力を入れる事で、「この絵は何を表現したいのか?」というコンセプトが明確に反映されるようになる為です。
一方で、背景や遠景に関してはあまり細かく描き込みすぎず、シンプルにまとめることで、主役を引き立たせる事が出来ます。
力をいれる箇所とそうでない箇所とを描き分ける事で、メリハリをつけるだけでなく、見せ場を演出する事にも繋がります。
ネガティブスペース(余白)の活用
描かれていない部分、すなわちネガティブスペースを効果的に使うことで、視覚的に余裕のある作品に仕上がります。
空や水面など、シンプルに描かれる部分をあえて残すことで、作品全体にリズム感を持たせることができます。
ペンで細かく描いていると、どうしても「全体的に手を加えなくてはならない」という意識が強まってしまいますが、描く箇所と描かない箇所の描き分けをする事が大切です。
細部を描き込む
主要な部分が描き終わったら、細部に目を向けます。
例えば、遠景に山を描く場合、その表面の質感を細かい線で表現することで、リアリティが増します。
前景にある葉や花も丁寧に描き込むと、作品全体が引き締まります。
練習と観察を積み重ねよう!
ペン画で特に風景を描く場合、繰り返しの練習と観察が上達の鍵となります。
以下の方法でスキルを磨くことができます。
風景写真を参考にする
現地で直接スケッチをする事も良いですが、風景写真を参考にする事で、さまざまな質感や遠近感、光の表現をペン画で模写する事も良いです。
これにより、実際の風景を描くときに役立つ技術を身に付ける事が出来るようになる為です。
また、人通りが多い場所だとその場で描く事は難しいですし、撮影後、家に帰ってからゆっくりと描き込む方が良い場合もあります。
スマホを使えばどこでも簡単に撮影する事が出来ますし、構図を決める練習にもピッタリです。
枚数を重ねる事で構図に対するイメージも洗練されてくるので、外出する際は写真を撮る事を習慣化する事で絵の上達にも繋がります。
自然の観察
自然の中に出て、実際の風景を観察することで、木や草、水の動きや形をより深く理解できます。
こうした観察を元に、ペン画での表現に活かすことができます。
風景画を描く上で、「自然との調和」というのは大事なポイントでもあるので、自然に対する観察力も鍛えておくと良いですね。
風景画を練習する際は、人工物、自然、もしくは両方を描く事を意識して練習すると良いでしょう。
まとめ
今回は、ペン画で風景を描く上でのポイントについて解説をしました。
ペン画で風景を描く際には、線の強弱や陰影、異なる質感の表現に加えて、構図や詳細のバランスに気を配ることが重要です。
実際の風景をよくよく観察し、ペンの特性を活かして描くことで、豊かで奥行きのある風景画を完成させることができるでしょう。
こちらの記事が、ペン画で制作する上での参考になれば幸いです。
それでは、今回はこの辺で失礼します。
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