こんにちは。小笠原です。
ルネサンス建築を代表する建築家として、フィリッポ・ブルネレスキの名前が挙げられます。
ブルネレスキはフィレンチェ大聖堂のドームを手がけた人物でもあるので、建築士自体の名前を知らなくとも、建築作品を見た事があるという方は多いと思います。
そこで今回は、ルネサンス建築を手がけたり遠近法を発明したフィリッポ・ブルネルスキについてまとめさせてもらいました!
イタリアに訪れる際の事前知識として参考にしてもらえると幸いです。
目次
ブルネレスキとはどんな人物?
ブルネレスキは、15世紀前半にフィレンツェで著名な建築家や彫刻家として活躍しました。
彼は、フィレンツェ・ルネッサンスの三大巨匠の一人として、ドナテッロやマサッチョと並び称された人物です。
ブルネレスキは、ドナテルロが彫刻で、マサッチョが絵画で「近代的表現」を模索した中で、建築の世界でも重要な役割を果たしました。
特に、1421年から1436年にかけてフィレンツェのサンタ=マリア大聖堂の大円蓋を完成させ、後世においてこれがルネサンス様式建築の代表作となりました。
彼はこの設計の過程で遠近法を導入しており、この遠近法は後に絵画にも応用され、ルネサンス美術の新しい技法として確立されました。
また、彼の革新的な彫刻技法も、同じくフィレンツェの芸術家であるドナテルロによって採用されました。
最初は建築士ではなく彫刻士だった
ブルネレスキは元々、建築士ではなく彫刻家(金属細工師)でした。
今でこそ歴史上に名を残す建築士として扱われていますが、そこに至るまでの経緯は特殊なものとなっています。
ブルネレスキは1401年、フィレンツェのサンタ=マリア大聖堂に付属するサン・ジョバンニ洗礼堂の門扉の彫刻を担当するアーティストを決めるコンクールに応募しました。
彼はギベルティと最後まで競い合っていたものの、僅差で落選したと言われています。
両者は同じテーマで作品を作りましたが、ギベルティの作品はゴシック的な特徴を残しつつも繊細でした。
一方、ブルネレスキの作品はドラマチックで新しいスタイルを示していました。
ここで選考委員はギベルティの繊細さを高く評価したと伝えられています。
ブルネレスキはコンクールで落選したことで大きな失望を感じ、彫刻をあきらめて建築の道に進むことになったと言われています。
【補足】
このようなコンクールによる才能の評価が始まったのも、ルネサンス時代の特徴でした。
このコンクールでの二人の作品「アブラハムの犠牲」は、今でもフィレンツェの国立バルジェロ美術館で展示されています。
また、このとき選考委員はブルネレスキの才能も認め、二人に共同で制作する提案をしました。
ギベルティはそれを受け入れましたが、ブルネレスキは「一人で作業しなければ嫌だ」と拒否したため、ギベルティだけが優勝したと言われています。
これはブルネレスキに関する好意的な伝記作家による伝説に過ぎませんが、当時のアーティストの心意気の変化を示すものとも言えます。
サンタ=マリア大聖堂の設計を手がける
ブルネレスキは、古代ローマ時代の遺跡の発掘を通じて、過去の素晴らしい建築技術を学びました。
彼の建築の重要な側面の多くは、古代ローマ建築を基盤としています。
フィレンツェに戻ったブルネレスキは、市内の多くの重要な建築プロジェクトを手がけることになりました。
その中でも、彼の最も素晴らしい仕事はフィレンツェ大聖堂のドームを建設することでした。
フィレンツェのシンボルであるサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂は、1296年に建設が始まりました。
最初の建築家の死後、工事は50年間中断されましたが、1330年にはジョットにより鐘楼が追加されました。
ドームの設計は、直径42m、高さ80mという巨大なものであり、古代以来の挑戦でした。
1418年、大聖堂のドーム建設を担当するアーティストを決めるコンテストが開催され、ブルネレスキはライバルのギベルティとともに参加しました。
ブルネレスキはこのコンテストで優勝し、ドームの建設に着手します。
1420年以降、ブルネレスキの人生の大部分はこのドームに費やされました。
ドームの建設は容易ではなく、建築構造を作るモルタルが固まるまで数日を要し、ドームが自身の重さを支えることが課題でした。
ブルネレスキは、緻密な計算と天才的なアイデアでドームを形成する現実的な方法を見つけ出しました。
ですが、残念ながら設計図や図面は残されていないため、ブルネレスキがどのようにして解決策を見出したかは正確にはわかりません。
しかし、おそらくブルネレスキは、ローマで見たパンテオンや古代の建築家ヴィトルヴィウスが記した『建築学』から知識を得たとされています。
ブルネレスキは、古代の工学を学ぶことで、長らく不可能と考えられていた複雑な建築構造の実現を可能にしました。
その後、彼はフィレンツェの初期ルネッサンスの父の一人として、その名を残しました。
ブルネレスキと遠近法
ブルネレスキの芸術を語る上で欠かせないのが、「遠近法」です。
これは、同じ物体でも見る角度や距離によって各パーツの線が変化する遠近法の考え方を指します。
遠近法・透視図法の書き方に関しては、以下のまとめ記事を参考にして下さい。
ブルネレスキは、「なぜ条件によって物質の持つ線の長さや角度が変化するのか?」という事を体系的に研究した芸術家でした。
特に、彼がフィレンツェの洗礼堂で行った透視図法のデッサンは有名です。
彼が体系化した「透視図法」は、3次元のものを2次元の媒体に表現する際に有効でした。
透視図法を用いることで、絵画で現実の建築物をより現実に近い形で表現することが可能になりました。
透視図法は、ブルネレスキが自身の建築設計や彫刻制作に活用するだけでなく、同世代や後世の画家にも大きな影響を与えました。
例えば、マサッチョが1425年から1427年にかけて制作した『三位一体』は、ブルネレスキの遠近法の基礎を反映しています。
初期ルネッサンスの絵画作品では、背景に建築物(特に古代風のもの)を含める構成が一般的でした。
透視図法を用いて計算された建築物は、絵画全体に奥行きと写実的な空間表現をもたらし、ルネッサンスを特徴づける重要な要素となりました。
ブルネレスキが手がけた建築や作品
ブルネレスキが手がけた作品には、以下のようなものがあります。
フィレンツェ大聖堂のドーム(サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂)
ブルネレスキが手がけたフィレンツェ大聖堂のドームは、ルネサンス期の建築の傑作として知られています。
このドームは、直径42m、高さ80mという巨大なものであり、古代以来の挑戦でした。
ブルネレスキは、ドームの建設において緻密な計算と天才的なアイデアを組み合わせ、現実的な手法を見出しました。
彼はパンテオンや古代の建築家ヴィトルヴィウスの著書から影響を受け、革新的な建築技術を駆使してこのドームを完成させました。
その優れた設計と施工技術により、ブルネレスキのドームは当時としては前例のない偉業として称賛され、フィレンツェのランドマークとなりました。
サン・ロレンツォ聖堂
ブルネレスキが手がけたサン・ロレンツォ聖堂は、フィレンツェの中心に位置する教会で、メディチ家の教会として知られています。
ブルネレスキはこの聖堂の一部の改修や内装のデザインを担当しました。
彼のデザインは、古典的な要素とルネサンス期の革新的なスタイルを組み合わせたもので、建築史上の重要な作品として評価されています。
サン・スピリト聖堂
ブルネレスキが手がけたサン・スピリト聖堂は、フィレンツェにある重要な教会の一つです。
彼はこの聖堂のファサードや内装のデザインを手がけました。
ブルネレスキのデザインは、古典的な要素とルネサンス期の革新的なアプローチが融合したものであり、建築史上の傑作の一つとされています。
サンタ・クローチェ聖堂
ブルネレスキが手がけたサンタ・クローチェ聖堂は、フィレンツェに位置する重要な教会の一つです。
彼はこの聖堂のファサードの一部や内装をデザインしました。
サンタ・クローチェ聖堂は、フィレンツェのランドマークの一つとして知られ、ブルネレスキの建築技術と芸術的才能を示す素晴らしい作品の一つとされています。
オスピターレ・デッリ・イノチェンティ
ブルネレスキが手がけたオスピターレ・デッリ・イノチェンティは、フィレンツェにある歴史的な病院です。
彼はこの建物の建設に関与し、その設計や構造において革新的な手法を用いました。
この病院はフィレンツェのランドマークの一つとして知られ、ブルネレスキの建築遺産の重要な一部と見なされています。
ブルネレスキ建築の見どころについて
ブルネレスキは、古代ローマの建築を学ぶためにローマを訪れ、その影響を多くの建築に取り入れました。
例えば、彼は中世ヨーロッパではあまり一般的ではなかった中心点を持つ図面の設計や、古代ギリシャの伝統的な柱頭様式などを採用しました。
中世においては、「古代ローマ」の概念的な偉大さは認識されていましたが、具体的な技術的な理解はブルネレスキの時代まで重視されることはありませんでした。
ルネッサンスの古代復興は、主に絵画や彫刻に焦点が当てられていますが、建築においても同様の動きがありました。
ブルネレスキの建築作品を見ると、古代ローマの建築様式からの影響が明らかとなっています。
まとめ
今回はルネサンス様式を代表する建築家フィリッポ・ブルネレスキについてまとめさせてもらいました。
ブルネレスキは建築だけでなく、遠近法を発明し、現代の画家や建築家の作品にも活かされています。
建築パースは風景画や絵画制作においても使う技法でもあるので、個人的にかなり身近な存在のように感じられます。
先人のおかげで技術、文化の発展が成されていくものだと思わされます。
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